当院の整体の特徴
身体の共鳴を利用した愉気法の原理
当院の施術は日本の整体の創始者といわれる野口晴哉氏に思想的な影響を受けた片山洋次郎氏の提唱している愉気法に基づいています。
「気」というものに対して未だいかがわしい不思議エネルギーのように思われているかもしれませんが、日常のありふれた感覚の延長線上にあるものなのです。
気の感覚を活用すれば身体の歪みを引き起こしている力そのものにアプローチすることができます。
気が特別のものではないことを実感できるエクササイズも紹介していますので是非試されることをお勧めします。
気とは
気を観ることは特別のことではありません。
肩が凝る
喉が詰まる
くしゃみをした後に胸の辺りに温かい感じが広がる
頭が重い
怒ってカッカしたときに体全体が熱くなる
恥ずかしくて顔が真っ赤になった時のほてり感
おしっこをした時にブルっとなる
音楽を聴いて感動してゾクゾクっと体全体が震える
心・体を働かせたときに感じる内側の勢い・響き全てが「気」の体感です。
このような意味で気を感じられないという人はいません。
しかし気を無視して押さえつけたり、「気」に飲み込まれたり、
と人によって気に対するスタンスはそれぞれです。
体の内側の響き=「気」に対しての耳を傾け方をちょっと変えることで気の偏り=痛みや不快感の負のスパイラルを抜け出すことが整体の目的です。
「気に対しての耳の傾け方」とは身体の内側の感覚・動きに対してどのように意識の焦点を合わせるのか?ということです。
行き詰ったときにお茶を飲んで一休み
転んで泣き止まない赤ちゃんに「いたいのいたいの飛んでけー」をする
これらは、外的な刺激を利用して意識の焦点をずらすことにより、一つの方向に向かう気の勢いを変えようとする知恵の一つです。
このように気分に関しては普段から間合いを変えることにより「気」の勢いを自然とコントロールしています。
そして身体の違和感に対しても同じように間合いの取り方を変えることで気の滞りをなくし痛みを解消することができます。
気の体感のエクササイズ
ここで試してみてください。
今体のどこかに違和感があるところがありますか。
もしあるならばその違和感の発生している中心点を意識だけで探してください。
普段は思いのほかぼんやりとしか違和感の発生箇所を意識していないというのがわかるでしょう。できればイメージで矢印(→)を想像して、痛みの発生箇所をサーチしてみてください。そうすると先ほどと痛み・違和感の感じ方が違うのを感じられるかもしれません。
矢印をイメージすることにより、より細かく痛みの発生個所を特定できると思います。
次は痛みに対して矢印を上から下から右から左からといろいろな方向から向けてみてください。
ある方向から向けたときだけ痛み・違和感が強く感じたり、固まっていた痛みがじんわり広がっていったりします。反応が強く出る角度を見つけたら、矢印を違和感に対して近づけたり遠ざけたり、痛みを起点にして矢印を遠くの方まで伸ばしたりしてみてください。うまくいけば体の表面がスーッとして痛みが発散していくのを感じます。特に目のかゆみや鼻や喉の奥が痛い時にこの方法を試してみると誰でもはっきりと変化を実感できると思います。
このエクササイズは意識の向け方(角度や焦点)を変化させるだけで身体感覚は変化するということを実感してもらうためのものです。
そして上記のエクササイズをしていただくとわかりますが、気は決して意思で無理に動かしたり、飛ばしたりできるものではありません。気には気の行きたい方向があります。その方向性に沿って目を向けたときにだけ気は答えてくれるのです。
全体的に観る
気を通すというと一般的なイメージで「強力な集中力が必要なのではないか」と思っていた方は、先の章のエクササイズを読んで意外に思われたかもしれません。
気を通すには特に気張る必要はありません。がんばって集中しようと思う方がかえって気の流れを阻害するだけです。目的は自身が元々持っている内側の勢いの行きたい方向を知りたいだけなのですから。余計なものを「足す」ことではないのです。
人は意識の焦点を集中させることは得意です。「私は集中力が無い」という人も何かを見ようとするときには必ず何かに焦点を当てています。視野全体に均等に注意を向けて見ているという時はほとんどありません。何か興味がひきつけられるものがあれば自然に目が行ってしまいます。別の言い方をすると、何か興味を惹きつけられるもの以外は無視してしまいます。人は集中力が無いのではなく、意識を向けたものから一歩距離を置いて見たり、部分ではなく全体を見通す視点を持つほうが余程苦手です。
痛みとは全体に協調して動かない取り残された「部分」です。
部分に注意を向けつつ全体に気づいているような意識を保てば、部分に固定化されてしまった気が全体との繋がりを取り戻し、身体はバランスの取れた状態になります。
全体的に観るエクササイズ
楽な姿勢で両手を胸の前で向かい合わせます。(両手はくっつけないで5~10cm離す)
①両方の掌で呼吸するようにイメージします。
イメージするのが苦手な方は吐くときに手のひらを緩めることを意識してください。
その時に感じる手の感覚に意識を向けてください。
②両手の平の間が自然に広がったり縮んだり(感覚的には膨らんだり縮んだり)するようになる。
③手の平と同時に手の甲の側でも呼吸するようにイメージする。
④その(手の呼吸の)感覚を全身の皮膚に広げて、全身の皮膚で呼吸するようにイメージする。
⑤もしくは手のひらの感覚に注意を向けながら全身に注意を広げて体に起こる感覚の変化を観察する。
最初は手の平で呼吸をするイメージを使うと良いのですが、慣れてくると手の平や指からすっーと発散する感じがだんだんわかってきます。そのように感じられるようになったら、実際の呼吸と手の平の呼吸を連動させる必要はありません。この状態になると気と意識の連動はしっかりとできています。ただ手の平から発散する感じを感じるだけでよいです。この状態でさらに全身に意識を向けるだけで全身の皮膚から気が発散する感じになります。
さらに慣れてくると手のひらの呼吸を意識しただけで気を感じるモードに一瞬で入るので全身の気の流れが同時に感じられるようになります。
陰陽を中和する
意識を集中させると気は集まります。逆に言うと気の集まっているところに意識は強制的に集中させられもします。
蚊にかまれると痒い。意識すればするほど痒くてしょうがない。痛みはそれに注意を向けるほどに痛みを増します。気がある所に集まりすぎると、それと対になって気が不足する=盲点のように意識が集まらない場所が必ず発生します。
今度は違和感の発生している点に意識を向けつつ、その痛みの発生している点と平行ラインで体を輪切りにして、意識の焦点を回転させてみてください。この時に痛みではないがある種の感覚が発生するポイントがあります。これが痛みの発生源と対になる反対の力のポイントです。
できれば痛みの発生源と今見つけたもう一方の対になるポイントを両方意識してください。うまくいけば痛みのあったところは表面が涼しくなり、もう一方のところは温かくなる、もしくは今まで意識が向けられなかった盲点のポイントの筋肉が動き始めるので呼吸が大きくなります。場合によっては盲点のポイントに気が集まるまで時間がかかるので呼吸が一時的に止まる場合があります。
表面が涼しくなるのは過剰なエネルギーが体表から発散する時の特徴です。感覚としては冷シップを貼ったときのような感じです。対になる場所が温かくなるのは、今まで気が流れていなかったところに、痛みの発生箇所に滞っていた過剰エネルギーが回収されたからです。気が流れないと筋肉の状態としては力が無いのですが気が流れ出すと息を吸った時に弾力を取り戻します。そして今まで呼吸時にアンバランスに収縮、弛緩していた呼吸筋群が均等に動き出すので呼吸は自然に深くなります。
人間の気=生命力は陰(-)と陽(+)が向かい合うように注意を向けると中和するように動く、という性質を実感していただけたでしょうか。
このようなエクササイズを続けていくと、意識と身体感覚の連動が即座に起きるようになります。これは何も特別な能力ではなく、スポーツマンが自分の筋肉の動きに対して鋭敏であることとなんら違いはありません。
そしてこの方法は外側からの刺激や力で体を変化させるのでなく、自分自身の中にある気の流れそのものの勢いに従うことにより、自分の体力を無駄なく最大限に活用する方法です。
注意することは、最初に意識の焦点を合わせて気の流れが動き出してからは、意識の焦点をとどめることよりも、動き出した気の流れを感じることに重点を置くことです。意識の緊張度の強い人は自分の意思で無理に体のエネルギーをコントロールしようとする傾向があります。注意の焦点の強さのために気が集まりすぎて逆に気の流れを阻害する場合があるのです。気を自分の意思で動かそうとするのではなく、意識を向けることを呼び水にして、気の自然な流れを促すことが秘訣です。
意識のみで違和感がある場所を特定するのは難しいと感じる人は掌で試してみてください。あくまで意識は触る掌ではなく触られる体の違和感の変化に向けてください。掌の真ん中辺りで体を触ると体の内側の感覚がより敏感に感じられます。違和感が強く感じられる場所が見つかったら指で触ってください。指を当てる角度も色々変えてみてください。角度が違うだけで体の内側の感覚が変化するのが感じられるでしょうか。感覚が変化するということは気の流れが変化しているということです。そして反応が強くなるように触る角度が定まったら、もう一方の掌で違和感の発生している点と平行ラインの場所で感覚が敏感なポイントを探してください。この対極のポイントは最初見つけるのは難しいかもしれません。手の感覚としては手が吸い寄せられる、ひっかかる感覚があるところです。
愉気に対する誤解
意識を集中すると気が集まると整体法の創始者・野口晴哉氏は言いました。
愉気の方法としてもお腹に力をこめ手から息を吐くと述べています。このように言うと、気というエネルギーを術者の腹部から手に集めて、その集めたエネルギーを受け手に注入するものだと思う人が多いと思います。施術者が集中力・意思によって気を自在に操作する、というイメージを持たれる方もいるのではないかと思います。
実際整体の現場で「気」と言うと、なにか不思議なエネルギーをイメージされている人がほとんどです。そのエネルギーは自分の意思で右から左に送ったりできるもの、もしくは「邪気を受ける」「生気を吸い取られる」というように、相手から取ったり取られたりするものとしてイメージされています。
先の章でいくつかの自分でやる整体の基本を示しましたが、ここには手から「気」を送ったりするという要素は一切ありません。意識や手を手助けにして、身体の内側の響きがよく感じられるように耳の傾け方を少し変えるだけです。
それはラジオのチューニングで一番クリアに音が聞こえるようにダイアルを調節するのに似ています。
気は送ったり、吸い取られたりする「もの」というよりも波長をあわせるものと言えるのかもしれません。
身体間の共鳴を利用した整体
では自分ではなく他人が同じ場所を触ったり、意識を向けた時にはどうでしょうか。それは触る人の注意がどこに向けられているかによって結果は変わってきます。
対象は観察者の見方によって違った存在として立ち上がります。
施術者が受け手を物質的なモノとして見ればそのようなものとしての対象が見えます。
レントゲンで観た身体はX線という目を通して観た身体です。X線撮影では写らないものは評価の対象外になってしまいます。
医学的な検査で見れば化学レベルでの対象が立ち上がります。
人は誰かの気持ちを感じようとするときは自分のこころを使います。
他人が考えている論理を理解するには自分の思考を使います。
このように何かを理解する、ということは本質的に同じ地平にある事柄のみ可能です。
頭で理解する感情というのは本当はありません。
感情で思考を理解することももちろんありません。
本当になにか知るには同じ地平に立たなければなりません。
では他者の身体の内側の響きを感じるにはどうすればよいのでしょうか。
自分の身体の内側の響きの変化を感じればよいのです。
少し練習すればわかるのですが、自分の生命感覚を使い他者の生命感覚を感じること自体はそんなに難しいことではありません。これは日常的に私たちがしていることの延長なのです。いらいらしている人を見ていると自分もいらいらしてくるとか、図書館で勉強している人の中に入ると、自分もきりっと引き締まり集中できるとか、数え上げればきりがありません。人間はこのように対象を普段から共鳴的に身体の内側の響きを通して感じています。
ただ日常生活では自身の生命感覚に影響を与える要素がいくつもあります。寒暖、風などの気候・食べ物・人とのかかわり・自身の好き嫌い・価値判断など様々なものが複数同時に生命感覚に影響を与えます。しかし人の注意力は非常に限られた範囲にしか無いのでほとんどの関連を見過ごしてしまいます。自身の意識の方向性と生命感覚の関連をしっかりと結びつけることが難しいだけなのです。
もしも触る人が、自分の内側の響きに耳を傾けつつ相手に触るなら相手にも自分にも同じ響きが起こります。施術者は施術者自身に起こる響きをモニターすることによって、受け手の内側の響きの偏りと強弱を感じることができます。
後は先の章のエクササイズで示した整体の基本、「部分を全体に繋げる」「陰陽を中和する」という身体のチューニングを施術者が自身の生命感覚を感じながらやるだけです。
施術者は受け手にエネルギーを注入したり、奪われたりはしません。「気」というものはあくまで双方向的に影響を与えるものです。このことを片山氏は判りやすく説明しています。
「共鳴ということは、別の言い方をすると、一種の波動みたいなものをお互いが持っていて、それぞれある種の波長みたいなものがある。それは硬直したものでなくて、弾力のあるもので、楽器をチューニングするように、あるいはハーモニーを作るというようなことと同じように、あわせることができる、というふうに考えてもいいと思います。」気と身体p36
「自分ひとりでやるよりも誰かと響きあう力を活用するほうが、うまくいった時には、身体のエネルギーの流れがぐんと良くなり、より良く響きあう深いハーモニーが生まれます。」身体にきくp98
整体時の気の基本反応
気による整体の反応は一般的に以下のようなものがあります。
身体の内側が温かくなる、
ちくっとする、ジーンとする、疼く、びりっとした電気的な感じ
何かが流れている感じがする
体表がシップを張ったように涼しくなる、内側から外側に抜ける感じ
筋肉が弛む(逆に張ってくる感じがする、)
筋肉がぴくぴく動く。反射運動する
呼吸が深くなって(下腹で自然に呼吸)ほっとする、落ち着く感じがする
頭・首・肩が軽くなる
視界が明るくなる(目頭回りから気が発散して涼しくなる結果そうなる。涼しくなる手前で詰まってしかめっ面になるときも多い)
気は発散する時の反応と集中する時の反応があり、その反応が筋肉にも影響を及ぼし、動きや呼吸の変化として現れます。
外側が涼しくなるのが発散、内側が温かくなるのが集中の反応です。
反応か強くなり気の流れが非常に良い状態になると、身体の表面全体が涼しくなり、身体の真ん中を下から上に上がる流れを感じる状態になります。
この下から流れる力が途中の詰まりをすべて取り頭まで繋がるのが最高の状態と言えます。
この状態になると呼吸も大きく、ゆーっくりになります。