otua87

2020年1月29日

睡眠時の気の流れ(野口整体の上下体癖と合わせて考察)

最終更新: 2020年2月6日

片山洋次郎氏の「気ウォッチング」(単行本)「整体、共鳴から始まる」(文庫版)に睡眠に入るときの気の流れの特徴が書かれています。

睡眠に入る場合、緊張をゆるめて発散することが必要である。

目が覚めている時は、背中から頭頂、頭部から胸・腹へという流れが強い(督脈系)。ところが睡眠中は会陰から腹部を通って頭部(目の高さより下)へ上がり、頭部から脊柱へ下がる流れが優位になるようなのだ(任脈系)。入眠するととくに頭から背中→足へ向かう流れが強くなって、足がまず温かくなってきて、次に涼しくなってくる。つまり全体にエネルギーの発散が高まって、身体の緊張がゆるんでくる。お腹の中は温かくなる。頭頂と会陰が十分に弛んでくると、会陰からエネルギーが腹部に入り、身体の中心を貫いて頭頂から抜ける。

以上引用です。

野口整体では上下体癖と言われる、「頭脳型」の傾向の強い人の椎骨は上に持ち上がる、と言われています。椎骨が持ち上がるということは、背中側を下から上に持ち上がる力が常に働いている、ということです。「考える」「思考する」こと自体が椎骨と腸骨を上に持ち上げる、とも言われています。片山さんも同じように言っています。

これが果たして本当なのか、私の気の反応から検証してみたいと思います。

まずは覚醒時の督脈の気の流れからです。

背中側を骨盤から頭に向かって、気の流れをイメージすると、背中がまず涼しくなります。

頸椎と後頭部のつなぎで、気の流れがあふれて(そこで引っ掛かるので)腕、脚がばっと涼しくなります。この部分がまず一つの関門でここから頭蓋骨の中に気が入る入り口があるようです。なぜそのように考えるかというと、この場所でまず流れが引っ掛かり、頭の中心→目の奥→顔の方に涼しい気の流れがもれてくるからです。鼻・目付近がこの気の流れで開く感覚も起こります。

もう一つ後頭部の真ん中あたりに疼くような反応があり、そこから頭蓋骨の中心に向かって流れる、気の流れが起こります。先ほどとほぼ同じ目の周りの反応に合わせて、反射的な瞬きが起こります。

以前にも述べましたが、この瞬きは気が体の中から外に出ようとする時に起こる、典型的な反射運動です。

この気の流れは骨盤→頭蓋骨へと気の流れを誘導した時の反応です。

矢印をイメージして骨盤→頭蓋骨に張り付けるのです。

背骨に直接貼り付けるイメージの方が確かに反応はシャープですが、離れた位置に設置した方が背中全体が反応して、身体全体に影響が及ぶような気がします。

頸椎と後頭部のつなぎ目辺りは経絡理論では風府にあたるでしょうか。野口整体では頭部第五の場所だと思います。ここは目や眠りの急所と言われています。

この部分が詰まっている、だるい感じだと、ここから頭の中に気の流れが流れません。

流れていれば目、頭の真ん中にスッキリ感があるので、この部分と意識の覚醒度合いは気の反応からも明らかに関係があるはずです。

後頭部の真ん中の方は脳戸でしょう。このポイントは普段私が重要視しているポイントでもあります。ここと目頭を結ぶ頭の中心に自律神経の中枢である視床下部があるからです。脳戸、こめかみ、目頭という脳の浅い部分(意識的な活動メインの大脳)の緊張を取ると、自然に視床下部が活性化した副交感神経優位のリラックス状態に導かれるので、施術時の導入として必ずここは観察しています。

この脳戸が私の場合、今回疼く反応が起きましたが、これは力が無い「虚」の反応です。

覚醒時は目頭側がプラスの「実」で後頭部側がマイナスの「虚」になりがちです。

と、いうのも覚醒している状態そのもので、普通前側に意識の焦点が移るからです。

もしも頭の中心に意識の重心が来るとリラックスしてしまい、脳表面の大脳が働く状態から、脳幹・間脳と言った深部の脳が活性化する状態になり意識を保てなくなります。

ちなみに脳戸から頭の中心への流れにより、視床下部が活性化すると、即会陰や生殖器辺りから上に上昇する任脈系の気の流れが反応し始めます。こうなると覚醒時の意識状態からはかけ離れてしまうので、脳戸は覚醒時はお休み状態で働かないのがノーマルのような気もします。

このような反応から判断して骨盤から背中を上がる気は、結果的に頭の中心から前に抜ける意識の流れを作るので、意識を覚醒させる作用がある、というのは間違いないと思われます。また下から上に上がる気の勢いで、椎骨も上に上がるという説も、風府が重くなり落ちた時に眠い感覚が起こることから考えても、正しいようです。

しかし、普段の生活で私が示した反応を、感じる人はいないと思います。

普通に、物事に集中したり、考えてもこのような気の動きは起こりません。

集中する時には風府の後頭部辺りが引き締まる感じと、眉間辺りに焦点を集めている状態を実感できると思います。集中すれば後頭部、眉間は集中し気がプラスの「実」になるが気を下から上に引き上げるほどには作用は強く無い、と感じられます。気は集まるが動きはない、というのが実感でしょう。

もし、普段の生活でこのような気の動きを感じるとするなら、しっかり腰に力が入った状態での目を使う極度の集中作業をする場合、が考えられます。

腰にしっかり力が集中することが力の支点になり、注視することが矢印(意識)の方向性になります。

しかし覚醒時のデフォルト状態は眉間辺りに位置し、気の動きをほぼ感じないでしょう。疲れてくると、この前方に焦点がある状態を維持できなくなり眠くなります。

眠くなる時は眉間辺りにある焦点が後ろに引っ込む。

さらに先ほど検証した背中を下から上に流れる過程と反対の気の流れが起こります。

つまり眉間→視床下部→風府です。

この流れを作ると、目の奥と風府が重だるくなってきます。さらに風府から背骨に沿って下に気を流すと、眠気を感じる時に特有の重だるさが肩、腰に広がります。

気の流れを皮膚の中に通すイメージで下ろすと、このような重だるさを感じます。皮膚よりも外の空間で気の流れを作ると、重だるさよりも体の外に気が発散して涼しい反応が強くなるので、眠りに至る気の流れとしては、前者の流れが眠りに至る初期の気の流れなのだと考えられます。

片山さんの考察では、眠りに至るときに、まず入眠すると特に頭から背中→足へ向かう流れが強くなって、足がまず温かくなってきて、次に涼しくなってくる。その後会陰→頭頂の流れが貫く、とあります。

まず先には眉間→視床下部→風府→脊柱へ下がる気の流れが起き、その後得会陰→腹部の流れが起こるという私の考察とほぼ同じでしょう。

ただ、会陰→腹部の気の流れの上昇する気の流れをもし感じると、実感としては眠くならないです。上昇する流れは人を眠りに誘いません。この流れは眠りがある程度深くなった時に起こり、その時にはもう普通は無意識の状態になっているのではと思います。

また脚の涼しさも普通の感覚では意識できない過程です。普通は後頭部や、腰などのだるさを意識した時点で眠ってしまうでしょう。

片山さんも、私と同じように実験的に気の流れを作って観察したはずなので、このように記述したのも、うなずけます。

片山さんが目の高さより下と限定しているのは私も同意見です。眉間→視床下部→脳戸という平行する流れが活性化すると、すぐに視床下部が働き、会陰から気の流れが上昇するので眠りには至らないはずです。

目より上にあればさらに上昇する気の流れが強くなり眠くなりにくくなります。

ここまでの考察から野口整体でいう上下体癖の人は、普通の一般的な意識の焦点の合わせ方をしていない可能性が考えられます。

目線の高さに意識があれば、常に椎骨を下から上に引き上げる力はそんなに強く働かないからです。

野口整体の記述で上下の人の記述を見てみます。

要約すれば上下1種は色々考え、空想して、結論を出すだけで満足する人。行動にはうつさない。

2種はいろいろ考えるが、結論を出せず、自律神経(迷走神経)が乱れ胃に異常をきたす。

12種ともに沢山眠る必要がある

というものです。

色々考えて結論が出ないということは、今まで述べてきた風府と眉間に加えてこめかみが緊張しっぱなしな状態です。その状態だと自律神経が乱れるというのは、私の観察からも正しいと思われます。

1種に関しては、頭頂もしくは頭より上の空間、もしくは目線より上の狭い範囲に意識が合っているのかもしれません。野口晴哉は1種はポカンと上を向いて考えていると、言っていることからも「上を向いて」考える傾向があるはずです。頭よりも上の空間に意識の焦点があると気は自然に上に上がってきます。

ただし上の前方では反応は弱く、頭頂部でないと強い反応にはなりません。焦点が高くになればなるほど気を上に引き上げる力は強くなります。

1種は空を飛ぶ夢を見るとか、性欲が思考に変化する、という表現からも、頭頂部に意識がある可能性は高いような気がします。性欲が思考に変化するとは、気が下から腹側の任脈系を上がってきたときに、途中で(生殖器系や消化器系、呼吸器系でも)引っ掛からないということです。引っ掛からないということは欲がうすい、ということです。

1種が体の中心側に意識が偏り、2種が外側である、可能性もあります。

2種は首の横(胸鎖乳突筋)~こめかみ、1種は真ん中が緊張する、という野口整体系でのテーゼからも、偶数種は中心に力を集める力が弱い傾向があるはずです。こめかみに緊張が集まるということは、1種のように一点に集中して圧縮・爆発して鬱散できないということです。ではこのこめかみの緊張はどうやったらとれるのか。より集中度をまして圧縮しても鬱散しないので、間合いを遠くして外側から発散させるしかありません。

現実的な例として考えられるのは悩み、考えを放り出して離れる、距離を置く、ということでしょうか。そうすると気の流れは自然に動き出します。外の流れが発散しきれば、自然に会陰→腹→頭の中心という流れが動き出します。このような流れが良い2種の問題解決方法と言えるかもしれません。

2種においてこのような発散が起こるには、視線が目線よりも上にくるというのが気が上昇する条件になるはずです。

中心寄りではなく頭の周辺全体に意識が拡散しつつ、上にある、というのが2種的な意識の良いあり方のような気がします。片山洋次郎氏はこれを2種の俯瞰的な視点、と特徴づけています。このように上側周辺部に意識の焦点をむけた時には、気がこめかみにとどまらず発散して、身体の外側を上から下に降りる反応が起きます。

この外側の発散が一通り進むと自然に任脈系の、内を下から上に上がる流れが出てくるのが、整体の現場で起こる一般的な反応です。

野口晴哉が2種は下へ落ちる夢を見ると言っていることからも、もしかしたらこちらの方が、気の流れとして正解なのかもしれません。

頭脳型上下の性質についてはまた一つの試案程度ですのでまた後日加筆する予定です。

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